研究課題
特定領域研究
MRIとTMSを組み合わせた研究を継続すると同時に、パーキンソン病類縁疾患での脳可塑性を検討した。また、加えて、TMSによるヒト脳可塑性を検討するなかで、正常者において年齢とともにM1可塑性が低下する傾向をもつことを発見した。ドパミンと線条体の神経可塑性の密接な関連が報告されているが、従来は他の部位での神経可塑性との関連は未解明であった。われわれは、ヒトを対象として運動皮質可塑性がドパミンによって調節される現象を初めて報告した(Ueki, et. al., 2006)。この研究を発展させ、多系統萎縮症(MSA)2名と皮質基底核変性症(CBD)2名について、運動皮質可塑性を検討する実験を行った。これらの疾患でもパーキンソン病と同様に運動皮質可塑性が低下していたが、パーキンソン病ではドパミン投与で可塑性が回復したのとは対照的に、可塑性低下はドパミン製剤の投与によって改善しなかった。この実験結果からは、ドパミンの有無そのものではなく基底核-皮質ループの機能障害とM1可塑性に関連性があることが示唆された。TMSによる連合性ペア刺激を用いた可塑性の研究をすすめるなかで、神経疾患だけではなく、正常のagingの影響だけでも脳可塑性が変化する可能性に思い至った。20から70歳の正常被験者40名での連合性ペア刺激による脳可塑性と年齢との間に統計的に有意な相関(R = 0.33)を得た。このagingの影響がM1での皮質内回路の変化によるものか、基底核-皮質ループに関連したものか、は不明で、今後の検討が必要である。M1での可塑性とドパミンとの関連について、基底核-皮質ループの機能障害との関連性を示すことができた。また、正常被験者においてagingによって可塑性が低下することも示された。今後の展開としては、患者群でのMRI-TMS同時記録で、可塑性のメカニズムと基底核-皮質ループの関連についてさらに研究を進めることを目標としている。
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