研究概要 |
本年は、皮質の代表的な4種類の非錐体細胞(FS cell, Martinotti(MA)cell, double bouquet cell, large basket cell)の樹状突起の形態特性を検討した。ラットの大脳皮質を使った電気生理スライス実験で単一の非錐体細胞の生理的な特性を抽出した後、染色し、Neurolucidaで3次元的に樹状突起を再構築した。そして、電子顕微鏡観察によりその樹状突起を再構築し、その形態を詳細に測定した。その結果、まず、樹状突起へのシナプス入力は、細胞体近傍の50-100Mmあたりまでは密度が低かったが、それより遠位部は一定の密度である事がわかった。また、サブタイプにより、密度は異なっており、FS細胞とMA細胞の樹状突起上のシナプス密度が他の2種類よりも2〜3倍程高かった。また、GABA postembedding免疫組織化学法を使って、GABA陽性シナプスの密度を見たところ、樹状突起の位置や細胞のサブタイプに関係なく、ほぼ一定の入力密度を示したため、上述のサブタイプによるシナプス密度の違いは、興奮性のシナプスの入力密度の違いを反映している事がわかった。次に、樹状突起の太さに関する解析を行った。樹状突起の太さは、細胞体からの距離には相関せず、むしろその部分から遠位部の樹状突起の総延長に相関して太さが決まる事がわかった。また、樹状突起の分岐部分の前後でその形状を測定したところ、下記の2つの法則が同時に成立する事がわかった。(1)親樹状突起の断面積は2つの娘樹状突起の断面積の和に等しい。(2)Rall model(親樹状突起のコンダクタンスは2つの娘樹状突起のコンダクタンスの和に等しいという法則)が成立する。即ち、親樹状突起のコンダクタンスは2つの娘樹状突起のコンダクタンスの和に等しいという事である。
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