研究概要 |
脳の高次機能め一つとして、外界等を正しく認識するために、不完全な感覚情報からの推論があげられる。推論を進めていく上で用いるべき情報は、過去の経験により得られた視覚世界に関する"知識"とリアルタイムで得られる感覚情報である。ここでは、外界の状態に対して仮説を立て、それを感覚情報および"知識"の両者を用いて、より実際に近づく方向へと更新していく脳メカニズムが必要となる。本発表では、このような脳のメカニズムとして生成モデル(Mumford 1992, Kawato, et. al.1993)を取り上げ、そのfMRIによる検証を行う(理研の田中啓治、Kang Cheng,上野賢一,浅水屋剛らとの共同研究)。生成モデルによる外界の認識において鍵となるのはトップダウンの神経投射が外界の順光学過程をシミュレートする点である。 私たちは、上記のメカニズムが働いていることを確認するために、安定的に「視覚入力が存在するのに見えない」錯視を開発して、その最中のV1の活動をfMRIによって記録した。その結果、興味深いことに、通常の見える状況(統制条件)と比較して、見えない条件で活動が大きいとの結果を得た。第一次視覚野の活動のうち視覚入力によるもの以外として、生成モデルにおける予測誤差が大きなウェイトを占めている可能性が示唆された。
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