研究課題
特定領域研究
大脳皮質一次視覚野ニューロン(V1)の視覚応答は受容野外に呈示した刺激によりダイナミックな抑制性修飾を受け、これは刺激文脈依存的反応修飾と呼ばれる。私は麻酔下のネコV1における刺激文脈依存的反応修飾について、フィードフォワードメカニズムに焦点を当てて解析を行った。特にグレーティング刺激を受容野内外に静止フラッシュ呈示したときの外側膝状体(LGN)と一次視覚野ニューロンの応答および修飾作用の時間経過について比較検討を行った。結果:1)LGNにおいても、V1同様に刺激方位にチューニングした反応修飾が観察され、その潜時(25-30ms)が、V1ニューロンの興奮性応答の潜時(35-40ms)よりも短いことから、網膜-LGN間投射によると考えられた。2)LGNニューロンの受容野および受容野外修飾野はV1のそれよりも小さく、LGN-V1間の収束的投射を含め、V1ニューロンがより広い範囲の情報を統合していることが示唆された。3)V1において薬理学的にGABA抑制を遮断する実験では、V1ニューロンの反応修飾にほとんど影響が見られなかった。これは水平結合やトップダウン投射が皮質内抑制を介してこの修飾効果をもたらすという仮説を否定するものである。4)V1の反応修飾には受容野周囲1-2°の狭い範囲を起源とするものと、半径10°ほどの広い範囲を起源とするものが観察された。前者はLGNにおける反応修飾によく似た性質を示した。後者は皮質内における統合を示唆するものである。考察:ネコV1の刺激文脈依存的反応修飾はフィードフォワードメカニズムに依存していることが示唆された。動物が環境内でアクティブに活動し、そのために必要な視覚情報を処理する場合には、フィードバックメカニズムの関与が大きいと考えられる。しかし、初期視覚系のフィードフォワード投射が、方位・空間周波数選択性などの刺激特徴抽出性をダイナミックに調節していることは明らかである。
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