研究概要 |
扁桃核は,サルやヒトを対象とした脳研究から,情動情報の認識やその価値判断に重要であることが知られている。扁桃核が情動情報をどのように処理し,再現し,どのように行動に結び付けているのかを理解するために情動刺激に対する扁桃核の応答性を調べた。 3頭のサルの3種類の情動表出(スレヅト,クー,スクリーム)からなる9種類の情動刺激と2種類のヒト刺激,2種類の物刺激からなる合計13種類の刺激セットを用い,サルが注視点を注視しているときにこれらの刺激をランダムに提示し,サル扁桃核のニューロン活動を記録解析した。 扁桃核の中でも他の脳部位へと情報を送り出している出力核である中心核のニューロンは他の亜核のニューロンと比べて,応答性に差があるか否かをニューロン群で比較した。クラスター分析の結果,中心核のニューロンの応答は,サル,ヒト,物体というカテゴリーに対応したクラスターをよりはっきりと示していた。 また,昨年度までに報告した視覚要素と聴覚要素のいずれにも応答を示すニューロンがどのように中心核にできていくのかを調べるために,今年度はビデオ刺激の視覚要素と聴覚要素を同時に経験したことのないサル扁桃核からニューロン活動を記録し,その応答性を検討した。その結果,これまでのところ視覚要素と聴覚要素のいずれにも応答を示すニューロンは発見できなかった。こうした応答性は視覚要素と聴覚要素を同時に経験することによって獲得されていくものと考えられる。
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