研究概要 |
神経前駆細胞自身のアクティビティー,あるいはそれらを取り囲んでいるニューロンネットワークのアクティビティーが神経新生過程に与える影響を解析するために,前駆細胞がたどる運命(細胞系譜)の解析を試みている。 ラットの海馬スライス培養標本の顆粒細胞層下部にEGFP遺伝子を持ったレトロウイルスを注入すると,3〜5日でEGFP発現細胞が見られ始めるが,その一方でこの間に消失する細胞も多く確認された。残ったEGFP発現細胞の多くは7〜14日にかけて分裂を行っていた。それらの細胞の中には,28日までにニューロン様の突起を伸長させている細胞も見られた。また分裂後に片方の娘細胞が消失してしまうものも見られた。ウイルス感染28日後のEGFP発現細胞の表現型を免疫染色法により同定したところ,EGFP+のみの表現型を示したものが48.8%,EGFP+/GFAP+のものが46.5%,EGFP+/NeuN+のものは4.7%であった。これらの細胞の中から,4週間にわたって追跡できた細胞を抽出して,その細胞系譜を作成した。現在のところEGFP+のみとEGFP+/GFAP+になる細胞の系譜の作成に成功しているが,EGFP+/NeuN+についてはまだ得られていない。EGFP+のみの表現型を示す細胞では,ウイルス感染4週間後の子孫細胞の表現型は全てEGFP+のみであった。同様にEGFP+/GFAP+の細胞では,子孫細胞は全てGFAP+で,不等分裂を示唆するような系譜は得られていない。 アクティビティーの制御にはチャネルロドプシン2(ChR2)を利用する。ChR2改変体の作製とその機能解析では,コンダクタンスの増大したもの,長波長の光に対する応答性が増大したもの,不活性化が小さくなったもの,周波数応答特性の優れたものなど,野生型ChR2とは異なる特性を獲得し,より光刺激に適した改変体分子の作製に成功した。
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