研究課題
特定領域研究
記憶・学習、感覚情報処理、情動、概日時計など、脳がもつさまざまな機能では、特定の神経回路における遺伝子発現が重要な役割を果たしている。われわれは生きているマウスの脳で、遺伝子発現の変化を観察できる系の開発を目指した。記憶・学習を含むさまざまな脳機能と関連して誘導されることが知られているArc遺伝子のプロモーターと分解促進型の蛍光蛋白遺伝子を用いてトランスジェニックマウスを作成した。このマウスの脳を解析すると、蛍光蛋白が非常に強く発現していた。さらにin vivoで観察すると、光刺激、触覚刺激など種々の刺激に対して、蛍光強度が大きく変化することがわかった。われわれはこのマウスを用いて、通常の12時間:12時間の明暗サイクルで飼育した場合の大脳皮質における蛍光シグナルの変化について調べた。その結果、大脳皮質視覚野領域以外にも光刺激(部屋の明かり)に反応して蛍光シグナルが著明に誘導される領域が見出された。このような蛍光シグナルの変化が、実際のArc遺伝子の発現変化を正確に反映しているかどうか調べるため、定量的PCRの手法を用いてArc遺伝子の発現量を解析した。その結果、蛍光シグナルが誘導された領域では、確かにArc mRNAも強く誘導されていることがわかった。これらの結果は、生きているマウスの脳で遺伝子発現の変化を蛍光で観察できる系が完成したことを意味すると同時に、今まで捉えることができなかった現象もこの系を用いることによって捉えることが可能になったことを意味する。
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蛋白質 核酸 酵素 増刊号「神経の分化, 回路形成, 機能発現」 53(4)
ページ: 525-530
Journal of Bioscience and Bioengineering 103(5)
ページ: 497-499
Journal of Bioscience and Bioengineering 103(in press)