研究課題/領域番号 |
18021038
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
前島 隆司 生理学研究所, 発達生理学研究系, 助教 (70399319)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
7,600千円 (直接経費: 7,600千円)
2007年度: 3,900千円 (直接経費: 3,900千円)
2006年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
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キーワード | 逆行性シグナル伝達 / 内因性カンナビノイド / カンナビノイド受容体 / 抑制性シナプス伝達 / 海馬 |
研究概要 |
シナプス伝達の調節やシナプス結合の形成・維持過程において、シナプス後細胞からシナプス前終末へ作用が及ぶ逆行性のシグナル伝達が介在することが知られている。近年、そのような逆行性シグナル分子のひとつとして内因性カンナビノイドが見出された。内因性カンナビノイドの受容体(CB1受容体)の発現が発達期の脳にみとめられることから、このシグナル伝達系が神経回路の活動依存的な形成過程において不可欠な機構であると期待される。CB1受容体の活性化はシナプス終末の活動に抑制的な作用を及ぼすため、その恒常的な作用は最終的にシナプス結合の弱化・除去という構造的な変化を誘引すると考えられる。そこで、シナプス結合の機能的変化と形態学的変化を経時的に観察し、その因果関係を明らかにすることを目的とした。CB1受容体の強い発現がみとめられる海馬抑制性シナプスを対象に実験を行った。まず生後1-2週のラットより機械的に単離した神経細胞/シナプスボタン標本を用いて電気生理学的実験を行った。mGluR1/5代謝型グルタミン酸受容体を薬理的に活性化すると自発性の抑制性シナプス電流が一過性に抑制され、この作用はCB1受容体の阻害剤で阻害された。さらにこの作用を幼若期の海馬スライス標本において調べた。海馬CA3領域の錐体細胞において、シナプス後細胞の脱分極及びmGluR1/5受容体の活性化により抑制性シナプスの抑圧現象が観察された。組織学的実験により内因性カンナビノイドの生合成に寄与する分子群は興奮性シナプスの直下に存在することが示されているため、興奮性シナプスの活動に依存した抑制性シナプス伝達の短期的および長期的な可塑的現象についても検証した。以上のことから、興奮性入力による抑制性入力への異シナプス修飾作用が内因性カンナビノイドを介在して生じ、この分子機構により発達期の神経回路では興奮と抑制入力のバランス維持が行われていることが推察された。
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