研究課題
特定領域研究
キノコ体はショウジョウバエにおけ発達した脳構造であり、学習・記憶をはじめと知る多様な高次機能の中枢としで機能する。我々はこれまでに、キノコ体の形成と可塑性を支える遺伝子網の理解を目的に、マイクロアレーによる発現遺伝子の体系的解析を行い,キノコ体で発現する多数の遺伝子を同定してきた。さらに、キノコ体特異的RNAiにより神経構造に異常を誘起する遺伝子を多数選別Lしてきた。19年度はこれらの遺伝子の機能解析を行い、とりわけ、Hr46遺伝子についてはMARCM神経モザイク解析によりキノコ体神経幹細胞の経時的特異性の維持に重要な役割を果たすことを明らかにした。また、CG9296をはじめとする複数の遺伝子について、嗅覚連合学習に機能する結果を得た。さらに、遺伝子機能の基盤となる神経回路の解析を視野に、幼虫を使用した新しい学習・記憶パラダイムの解折を推進した。これにより、ショ糖報酬学習ではCREB依存性中期記憶が生成されるが、キニーネ罰学習では20分で消失する短期記憶しか形成されないことを明らかにした。さらに、特異的GAL4系統と温度感受性shibireタンパク質を使用したシナプス伝達阻害実験により、これらの記憶が、いずれも、幼虫のキノコ体もしくはその上流に位置する触角葉に保持されていることを明らかにした。加えて、報酬記憶の形成にはオクトパミた。幼虫脳においては、これら二つのカテコールアミン系神経のキノコ体と触角葉への入力パターン大きく異なっている。これらの結果は、報酬記憶と罰記憶の安定度の違いが、経験によるものではなく、それぞれの味覚因子により活性される神経系の入力様式の違いに起因するものであり、先天的かつ遺伝的に神経回路発生過程において決定されていることを示唆している。
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Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 103
ページ: 14417-14422
http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~tokunaga/welcome.html