研究概要 |
G蛋白質共役型受容体(GPCR)は動物ゲノムの中で最大の遺伝子ファミリーを構成し、神経伝達物質の受容体の多くがGPCRであること、現在使用されている薬剤の標的分子として最多であることなどから、成体脳におけるその機能について多くの知見が蓄積されている。本研究課題では,GPCRシグナル系の脳と網膜の発生分化における役割をニワトリ胚、マウス胚を用いて明らかにすることを目的とした。本年度は,脂質をリガンドとするGPCRシグナル,特に,リゾリン脂質(アシル基が1つで細胞膜間を移動しやすい性質をもつ)であるリゾホスファチジン酸(LPA)の合成酵素であるautotaxin(ATX)のニワトリ脳発生における役割について解析した。ニワトリ胚でのRNA干渉法は、長鎖2本鎖RNA導入法、短鎖RNA導入法、ヘアピンDNAベクター導入法などが報告されているが、我々はニワトリ胚で特に有効なDNAベクターを電気穿孔法により導入することで、脳や眼で効率よくRNA干渉をおこすことに成功した。その方法を用いて、ATXのニワトリ間脳形成における役割を調べたところ、ホメオ蛋白質であるPax6と関係のあることが明らかになった。並行して網膜GPCRであるオプシンに着目し、ニワトリ発生期網膜における非典型オプシン(視細胞オプシン以外のオプシン)遺伝子の発現様式について調べた。その結果、X型メラノプシン(Opn4x)以外にも、M型メラノプシン(Opn4m),VA opsin様分子が発生途上の視細胞以外の特定の網膜細胞、あるいは脳や神経管に発現すること、Opsin5が発生後期の大型神経節細胞およびGAD陽性アマクリン細胞の一部に発現することを明らかにした。視細胞オプシン(ロドプシン、錐体オプシン)遺伝子は、眼の病気や色覚多型に深く関係しており、非典型オプシン遺伝子も未知の眼の病気に関与しているかもしれない。
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