研究概要 |
Chromophore-assisted laser inactivation(CALI)は,生細胞における蛋白質の機能を時空間的に阻害する方法である。しかし,色素を抗体に結合させて行う従来のCALI法は,手技の煩雑さや非特異的不活性化の問題があり,普及していない。 われわれは,多光子励起を用いることによって,EGFP融合蛋白質をCALIのターゲット蛋白質とする多光子CALIを開発した。本課題では,多光子CALIによる阻害の対象を培養細胞から生体脳へと発展させ,生体脳での蛋白質の機能を時空間選択的に阻害する方法を開発する出発点として,以下の成果を得た。 (1)ギャップ結合の機能を解析する方法として,fluorescence recovery after photobleaching(FRAP)による機能解析法を確立し,多光子CALIが小さなギャップ結合(1 micrometer以下)だけでなく,大きなギャップ結合(5 micrometer以上)の機能を阻害できることを明らかにした。 (2)6量体を形成し機能するギャップ結合蛋白質コネキシン(Cx)について,野生型Cx43とCx43-EGFP発現ベクターを混合してHeLa細胞に遺伝子導入を行い,多光子CALIによって内因性に発現している蛋白質の機能も抑制できることを明らかにした。 (3)ラット胎児脳初代培養細胞にCx43-EGFP発現ベクターを遺伝子導入し,細胞間コミュニケーション機能をFRAPで解析しながら,多光子CALIを行うことにより,胎児脳初代培養細胞でも多光子CALIにより時空間特異的な機能阻害が可能なことを明らかにした。
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