研究概要 |
昨年度までに、ATP投与後の定常状態におけるP2X_2チャネル電流と膜電位との関係を定量的に解析し、膜電位依存的ゲートが存在すること、さらに、この活性化相が、細胞外ATP濃度に依存性を示すことを見いだした。明確な膜電位センサー領域は存在しないことから、そのゲート機構の由来として、「ATPの結合自体、もしくは、ATPが結合したATP結合部位の構造変化が、膜電位依存的である。」という可能性を想定し、以下の変異体解析により検証した。ATP結合部位の変異体K71A,K71R,R290A,R290Kでは、野生型でみられる、膜電位-コンダクタンス関係のATP濃度依存性、活性化時定数のATP濃度依存性が、共に減弱する傾向があったが、ATP感受性が激減していたため、解析できるATP濃度に限りがあり、明確な結論を導くことができなかった。そこで、さらに、ATP感受性の低下が激しくない2種の変異体K69RおよびK308Rについて詳細な解析を行った。K69R変異体は、野生型に比し35倍のEC_50値の増加を示した。その膜電位・コンダクタンス関係はATP濃度依存性を示したが、野生型と異なり活性化時定数はATP濃度依存性を示さなかった。K308R変異体のEC_50値の増加は8倍と緩徐であった。その膜電位-コンダクタンス関係、および活性化時定数は、野生型と異なりATP濃度依存性を示さなかった。以上の「ATP結合部位の環境を変えることにより膜電位感知機構が変化する」という実験結果から「(膜電位センサーの動き等ではなく)ATP結合にまつわる膜電位依存性が、P2X_2チャネルの膜電位依存的活性化の源である。」ということが示唆された。
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