研究概要 |
Fez (Fezf1), Fez-like (Fezl,Fezf2)は、中枢神経の前部で発現する転写抑制型ジンクフィンガー蛋白をコードする遺伝子である。マウス発生過程において、Fez,Fezlはそれぞれ胎生8及び8.5日より前脳の重複した領域に発現し、胎生中期には視床下部・前視床などの共通部分に加えて特異的発現も示す。ノックアウトマウスを用いた解析から、(1)Fezは嗅神経の軸索投射及び嗅球の層形成に関与すること、(2)Fezlは大脳皮質深層の神経細胞分化・形成に関与すること、(3)Fez,Fezlの重複した機能が間脳の前後軸形成に関与すること、を明らかとしてきた。本年度は、胎生9.5,10.5,12.5日のFez;Fezlダブル欠損胚と野生型胚から前脳部を採取し、Gene chipを用いて、ダブル欠損胚で発現が変化して遺伝子の検索を行った。その結果、ダブル欠損胚の前脳において神経抑制因子をコードするHes5の発現が増加し、Hes5の標的遺伝子であるプロニューラル遺伝子Neurogenin2の発現が減弱していることを見出した。HEK293細胞にFez,Fezlを発現することで、Hes5プロモーター活性を抑制できることから、Hes5が転写抑制因子FEZ,FEZLの標的遺伝子である可能性が示唆された。胎生9.5,10.5日のFez;Fezlダブル欠損胚では神経分化が抑制され神経前駆細胞の増殖が亢進しており、Fez,Fezl-|Hes5-|Neurogenin2遺伝子カスケードが前脳の神経分化・増殖を制御していると考えられた。また、ゼブラフィッシュにおいても、fez,fezlの下流で、Hes5の相同遺伝子及びneurogeninlの発現が制御されており、この遺伝子カスケードが、視床下部ドーパミン作動性神経の形成に関与している可能性が考えられた。
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