研究概要 |
[目的]培養細胞に酸化ストレスを加えることによりBACE1の発現変化の機序を検討した。[方法]BACE1を過剰発現させたSH-SY5Y細胞(BA3細胞)に酸化ストレス物質であるEthacrynic acid(EA)や4-hydroxynonenal(HNE)を負荷し、抗BACE1抗体を用いたWestern blotで検討した。BA3細胞にEA負荷を行った後、蔗糖密度勾配法により分画し,各分画のWestern blot解析を行った。分画前の試料と,脂質ラフト画分やそれ以外の画分をそれぞれ対照とEA負荷とで比較検討した。BACE1のリン酸化が起こらない変異であるS498A変異のBACE1を過剰発現させたSH-SY5Y細胞(SH-BACE1-SA細胞)でも蔗糖密度勾配法を用いて同様な検討を行った。初代培養神経細胞やSH-SY5Y細胞をそれぞれ蔗糖密度勾配法で分画し、内在性BACE1の分布も検討した。[結果および考察]BA3細胞における酸化ストレス負荷では、APP,calnexinレベルの軽度増加傾向.HO-1レベルの増加が認められた。また、EA20mM,HNE5mMでは細胞死はほとんど認められないが,EA30mMでは少数の細胞死が認められた。BA3細胞のEA20mM負荷時に脂質ラフト分画やそれ以外の分画でHO-1レベルの上昇がみられた。BACE1レベルは脂質ラフト分画で軽度増加傾向がみられた。BA3細胞とSH-BACE1-SA細胞にとおけるBACE1の分布では、BACE1の分布パターンに著変は認められなかった。初代培養神経細胞とSH-SY5Y細胞におけるBACE1の検討では、内因性BACE1の脂質ラフト局在が確認された。SH-SY5Y細胞では脂質ラフトにmatureBACE1が多く,非ラフトではimmatureBACE1が多かった。[結論]BACE1過剰発現SH-SY5Y細胞において,弱い酸化ストレス負荷によりBACE1全体量は変化しないが,脂質ラフトではBACE1レベルが増加する傾向が認められた。S498A変異BACE1も野生型BACE1と同様の脂質ラフト局在を示した。
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