研究課題
特定領域研究
眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早期発症型失調症(ataxia-ocular motor apraxia type 1 /early-onset ataxia with ocular motor apraxia and hypoalbuminemia:AOA1/EAOH)は、わが国における劣性遺伝性脊髄小脳変性症の半数以上を占める重要な病型である。我々はこれまでに原因遺伝子産物アプラタキシンAPTXが1本鎖DNAの損傷修復機構に関与していることを明らかにしてきた。本研究はAPTXの生理機能を明らかにし、AOA1/EAOHにおける神経変性機序を解明することを目的とした。まずGFPと融合したAPTXを安定発現する細胞を樹立し、発現蛋白を共焦点レーザー顕微鏡にて観察すると、全長型APTXは核、特に核小体に強い局在を示した。核小体の中ではfibrillar center (FC) とgranularcomponent (GC)に局在した。全長型および既知の疾患関連変異体をCOS7細胞に一過性に発現させると、全ての変異体においてGCへの局在が著明に減少していた。次に、APTXの核小体局在を制御する蛋白質を同定するため、nucleophosmin (B23)、nucleolin、fibrillarin、PARP-1、XRCC1、topoisomerase I を、各々に特異的なsiRNAを用いてノックダウンし、APTXの核小体局在への影響を調べた。その結果、B23およびnucleolinをノックダウンした場合にAPTXのGC局在が減少することを明らかにした。このうちB23は全長型APTXによってのみ免疫沈降された。以上の結果より、APTXがGCに局在するためにはB23との結合が重要であるが、疾患変異体ではその結合活性が失われるため、核小体GCに局在し得なくなることが明らかになった。APTXの疾患変異体が核小体に局在できなくなることと、APTX蛋白の不安定性および蛋白量の減少との間には密接な関連が認められた。以上、本研究はわが国で最も頻度が高い劣性遺伝性運動失調症の分子病態の解明に取り組み、その分子病態の一端を明らかにしたものである。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Nucl Acid Res 35
ページ: 3797-3809
Mov Disord 22
ページ: 748-749
ページ: 1362-1363
Nucleic Acids Research (in press)
Movement Disorders (in press)