星は分子雲コアの重力収縮によって生まれる。分子雲コアは主に分子の回転輝線で観測されるので、コア内の分子組成は星形成過程を観測的に研究する上で重要である。特に近年では若い低質量星を形成中の原始星コアにおいて大型有機分子などの観測が進められており、これら分子の生成機構や分子存在度とコア進化段階との関連が注目されている。本研究では、気相反応とダスト表面反応を含む化学反応ネットワークモデルと一次元輻射流体力学コードによる星なしコアから原始星コアまでの物理進化モデルとを組み合わせ、重力収縮によってコア中心に落ち込んでいく各流体素片の分子組成進化を追い、原始星コアにおけるガス・氷分子組成の空間分布を調べた。その結果 1.蟻酸メチルなどの大型有機分子は20K〜40K程度の領域におけるダスト表面反応で形成される 2.メタンの昇華後、気相およびダスト表面反応によって炭素鎖分子が(再)生成される 3.コアがボック・グロビュールのように孤立して存在している場合は、分子雲に埋もれている場合に比べて二酸化炭素が効率よく生成され大型有機分子の存在度は低くなる ことなどが分かった。これらの化学反応は原始惑星系円盤でも起こると考えられる。さらにモデル計算の結果を用いて、原始星コアL1527で検出された炭素鎖分子やHCO_2^+の存在領域・生成機構を推定した。 またTW Hyaを取り囲む原始惑星系円盤で検出されたDCO^+についてその存在度や存在領域を原始惑星系円盤の化学組成モデルに基づいて推定し、円盤電離度も求めた。
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