研究概要 |
本年度は、カゴ状構造を有する充填スクッテルダイト化合物(RT_4Pn_<12>)において以下の実験結果を得た。 1)LaTPn(T=Fe, Ru, Os: Pn=P, Sb)化合物におけるラットリング、カゴサイトの格子振動 我々はLaOs_4Sb_<l2>においてゲストサイトのLa核とカゴサイトのSb核の核磁気共鳴(NMR)、核四重極共鳴(NQR)を行い、100K付近にカゴサイトのphonon異常と、ゲストサイトにラットリング運動に関係する異常なdynamicsが存在することなどを明らかにした。LaT_4Pn_<12>(T=Fe, Ru, Os: Pn=P, Sb)においても同様な測定を行い、100K付近に見られるカゴサイトのphonon異常はSbのカゴにのみ見られること、Laサイトにラットリング運動に関係するdynamicsが見られる試料とそうでない試料があることがわかった。全ての試料でLaサイトの超微細相互作用を測定した結果、異常なdynamicsの存在とT原子の電子状態が関係していることを明らかにした。 2)超伝導状態の渦糸構造における局所的な電子状態の解明 スクッテルダイト化合物LaRu_4P_<12>では超伝導転移温度が6Kと比較的に高い。常伝導状態では対称的なNMRスペクトルが得られ、そのナイトシフトの値も小さい。超伝導状態では渦糸構造のためNMRスペクトルはブロードな非対称的なスペクトルとなり、局所電子状態を調べるには好都合である。超伝導状態で核スピン-格子緩和率の周波数依存性を調べ、渦糸状態での局所的な電子状態を調べた。その結果、超伝導渦糸状態での電子状態の局所分布は、s波超伝導体では磁束の近傍で常伝導状態の電子状態より増大していることが明らかになった。この結果は理論結果とよく一致する内容である。
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