研究概要 |
PrFe_4P_<12>の圧力誘起金属-絶縁体転移の研究に引き続き,スクッテルダイト化合物の圧力誘起量子現象に関する研究を行った.SmOs_4Sb_<12>は磁場に鈍感な重い電子状態を持ち,その起源が従来の磁気的な近藤効果を通したものではなく,f電子の多極子モーメントの自由度やラットリングと呼ばれる格子の自由度が関連していると指摘されている.我々はこの物質の圧力効果に着目し,高圧下Sb-NQR測定を行った.その結果,近藤効果がコヒーレントになる特徴的な温度で核スピンースピン緩和率1/T_2に電荷揺らぎに起因した異常を発見した.この異常は0.8GPa程度で最も顕著になり,同じ圧力下で電気抵抗率に非フェルミ液体的振る舞いも観測されることが分かった.これらの結果は従来の磁気臨界点近傍の重い電子系物質では見られなかった振る舞いであり,SmOs_4Sb^<12>の重い電子状態に電気的な自由度が関与していることを強く示唆している.また.高圧下磁化測定,帯磁率測定も行った.SmOs_4Sb^<12>は常圧で約2.5Kのキュリー温度を持つ強磁性体と報告されているが.我々は高圧下で強磁性的な振る舞いは消え,自発磁化は約2 Gpaでほぼ消失することも明らかにした.このことは基底状態が単純な強磁性でないことを意味し、磁気モーメントとは別の秩序変数(多極子モーメント)の存在を示唆する.
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