研究概要 |
本研究では,実験データに基づいた熱力学的解析によって状態図を構成する方法,いわゆるCALPHAD(Calculation of Phase Diagrams)法を用いて,Rb-Ni-Ti-Zr4元系を構成する各3元系状態図の熱力学的解析を行い,これら各3元系の解析結果を基に4元系における相平衡を計算した.さらに熱力学平衡計算と速度論とをカップリングさせて3元合金および4元合金のガラス形成能を評価した.解析ではNb-Ni-Ti-Zr4元系に現れる各相について,液相および一次固溶体相は正則溶体近似を用いて,また化合物相は副格子モデルを用いてそのGibbsエネルギーを記述した.本研究では解析に先立ち,示差走査熱量測定(DSC)により,液相が関与する相境界を決定し,さらに第一原理計算によっていくつかの化合物相の生成エネルギーを算出した.熱力学的解析では,これらの結果と従来の実験データに基づいて熱力学パラメータを決定した.Nb-Ni-Ti-Zr4元系における相平衡は,各3元系の解析結果の外挿により計算を行った.その結果,実験結果をよく再現できる熱力学パラメータを得ることができた.さらに,状態図計算によって得られた熱力学量をDavies-Uhlmannの速度論的取扱いに導入し,アモルファス形成能を評価した.その結果Nb-Ni-Ti-Zr4元系においては20mo1% ZrまではNb-Ni-Ti3元合金へのZr添加量が増加するにつれて臨界冷却速度が遅くなることが予測された.この結果は実測結果とよく一致していることから,本研究により臨界冷却速度やアモルファス形成を支配する結晶相等の定量的な情報を得ることができたものと考えている.
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