研究概要 |
生体用合金Ti-6Al-7Nb合金の金属ガラス(BMG)ろう接材の生体中での挙動を見積もるため,疑似体液あるいは人工唾液浸漬曲げ試験を行った.Pd_<40>Cu_<30>Ni_<10>P_<20>およびNiフリーPd基BMGPd_<30>Pt_<17.5>Cu_<32.5>P_<20>によるろう接を試み,Pd_<40>Cu_<30>Ni_<10>P_<20>BMGろう接材同様評価を行った.また,耐食性に優れるZr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5BMG,接合強度に優れるPd基BMGの人工体液中での電気化学的評価を行った. 接合には赤外線ろう接装置を用い,Ar置換雰囲気中で接合した.ろう接材は一定時間Hunk's液(HBSS)あるいは人工唾液中に浸漬後,HBSSは液中にて曲げ試験を行い,人工唾液は大気中で行った.浸漬前の結果同様,Pd_<40>Cu_<30>Ni_<10>P_<20>ろう接材はPd_<30>Pt_<17.5>Cu_<32.5>P_<20>ろう接材に比べ高い強度を示した.破断面及び断面X線回折等の結果から,Pd_<40>Cu_<30>Ni_<10>P_<20>接合材の強度が劣る原因として,ろう材部の結晶粗大化が示唆された.但しろう接材強度の浸漬時間依存性カーブは結晶化の有無にかかわらず浸漬時間2Ms付近に谷または山を持つ対称的な形状を示した.人工唾液とHBSSでは,弱アルカリ性のHBSSに対し,弱酸性の人工唾液浸漬後の方が高い接合強度を示した.また浸漬液のICP分析からTiの溶出が認められた. Pd_<40>Cu_<30>Ni_<10>P_<20>並びにZr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5のBMG単体での動電位分極曲線を0.9mass%NaCl中で測定した.Auと比較すると,Pd_<40>Cu_<30>Ni_<10>P_<20>の腐食電位はAuのそれに近いが,過不動態電位はAuより低い.しかしZr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5では,過不動態電位はAuの腐食電位とほぼ同じ-0.2V付近で既に現れ,耐食性の低さを示した.これらの結果から,Pd_<40>Cu_<30>Ni_<10>P_<20>はBMGの中では比較的高い生体安定性を示し,生体内での劣化の影響も小さいことと示唆された.従って,Pd_<40>Cu_<30>Ni_<10>P_<20>BMGをはじめとするBMGろう材は,生体に用いる材料として有望であると考えられる.
|