研究概要 |
本研究は,若年性痴呆症の病原蛋白質であるニューロセルピンと,ポリマー化しないセルピンであるオボアルブミンをモデル蛋白質とし,「セルピンは何故準安定状態にfoldし,そしてどのような構造がポリマーを引き起こすのか?」を明らかにすることを目的としている。 本年度は以下の成果を得た。 1.セルピンの準安定型へのFolding経路の解明:ループ挿入能が無いオボアルブミンと,ループ挿入能を付加したオボアルブミン変異体R339TのRefolding経路について,蛍光プローブ等を利用して解析を行った。その結果,ループ挿入型(熱安定)の形成には,一旦ループ非挿入型(準安定)を形成することが必須であることが明らかとなった。このような準安定型のFolding中間体はこれまで発見されておらず,このような中間体の存在がコンフォメーション病の原因である大規模なタンパク質の立体構造変化に関係があると思われる[雑誌論文1,学会発表2,4:いずれも連絡責任著者]。 2.病原性ニューロセルピン変異体のRefoldingとポリマーの関わり on-カラムRefolding法という新奇の手法により4種類の病原性ニューロセルピン変異体のLatent型(ループ挿入型熱安定分子種)の大量調製に成功し[学会発表5:連絡責任著者],これを利用して蛍光プローブ等によるRefolding経路およびポリマー化反応の解析を行った。その結果,4種の変異体の内S49P, S52R, H338RのLatent型はループの挿入が不完全で,セルピン第二のポリマー化経路からポリマー形成が誘発されていることが明らかとなった。一方,最も痴呆の発症年齢が早いG392E変異体は,野生型同様安定にループが挿入されているが,シヤッター領域が関与しない経路で迅速にポリマーが進むことを示唆する結果を得た[学会発表1,3:いずれも連絡責任著者]。
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