研究概要 |
ワンポットで多段階の反応が準行する「カスケード型反応」は,省資源化へとつながるため,次世代の「環境調和型分子変換プロセスの開発」という観点からも注目されており,現在精力的に研究が行われている分野である.本研究課題の目的は,遷移金属触媒によって進行する反応を組み合わせ,多環式化合物の合成にも適用でき得る「カスケード型反応」の開発及びその応用研究である.本年度は特に,地球温暖化の抑制という観点からも興味深い,「二酸化炭素の固定化」を伴う環化-カルボキシル化反応の開発に焦点を当て研究を行ったところ,ニッケル触媒を用いると,エニンのアルケン上に電子求引性基を持たせた基質において環化-カルボキシル化反応が効率よく進行することを見出した.この環化-カルボキシル化反応は幅広い応用性を有し,pyrrolizidine, indolizidine,及びquinolizidine骨格の構築にも適用可能であった.更に,本環化-カルボキシル化反応を利用し,インドールアルカロイドの一種である(-)-corynantheidineの全合成にも成功した.自然界では植物のみが二酸化炭素を光合成によって消費しており,人類を含む他のすべての動物は呼吸により二酸化炭素を産出している.特に人類は,その社会活動・経済活動によってもより多くの二酸化炭素を産出しており,地球温暖化の抑制のためには二酸化炭素を消費するプロセスの確立が重要である.本研究では,ニッケル触媒を用いることにより二酸化炭素を消費しつつ有用な化合物の合成に成功したことになり,地球温暖化対策の第一ステップとしても意義深いと考える.
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