研究概要 |
未開拓乾燥地の生物資源を探索源とし、多元的スクリーニング系を用いて新規機能性物質の探索を行い、生活習慣病の予防薬や治療薬への開発を目的として探索研究を行った。 チュニジア原産の4種の植物抽出物について、マウスメラノーマ細胞(B16)を用いた活性試験の結果、Thymelaea hirsutaの抽出物に細胞毒性を示さず、メラニン産生のみを阻害している活性のあることが見い出された。そこで、この活性を指標にして、カラムクロマトグラフィーならびにHPLCを用いて分離・精製し、活性物質を単離した。得られた活性物質について、2次元NMRおよびMS等のスペクトルデータに基づいて解析を行ったところ、4種の既知daphnane型ジテルペンに加えて、2種の新規ジテルペン化合物hirseinAおよびBを見い出した。これらの新規化合物と既知化合物についてB16を用いたメラニン産生阻害活性を調べた結果、側鎖の大きさによって活性が異なることがわかった。一方、寄生植物アメリカネナシカズラより単離し、コーヒー等にも含まれている3,5-di-ο-caffeoylquinic acid(3,5-diCQA)に、アルツハイマー症毒素アミロイドβに対する神経細胞保護作用のあることを見い出した。そこで本研究では3,5-diCQAによる学習記憶障害改善効果を評価するため、アルツハイマー症モデルマウスを用いてモリス水迷路のフラットホームに到着する時間を30日間測定した。その結果、7日目から3,5-diCQA非投与群と比べて投与群の到着時間の短縮が認められ、25日目からは3,5-diCQA投与群の到着時間が著しく短縮された。これらの結果により、3,5-diCQAのようなカフェオイルキナ酸がアルツハイマー発症による学習・記憶障害を改善する効果をin vivoで確認した。
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