研究概要 |
ガンビエロールは,食中毒シガテラの原因である有毒渦鞭毛藻Gambierdiscus toxicusの培養藻体から単離構造決定された8環性(ABCDEFGH環)の海洋産ポリ環状エーテル化合物であり、マウスに対する最小致死毒性はMLD_5050μg/kgで強い神経毒作用を示す。しかし,天然からは極微量しか得られないことや渦鞭毛藻の培養生産性が遅いことから,天然物による構造活性相関研究を行うことは困難な状況にある。そのため,化学合成による類縁体も含めた試料の供給が望まれている。このような背景のもと、ポリ環状エーテル神経毒ガンビエロールの合成研究を実施した。 昨年度までに確立した合成法を基盤に、オキシラニルアニオン法によるD環の構築、ラジカル環化によるC環の構築、ビニルエポキシドの6-エンド閉環によるB環の構築、ヒドロキシケトンの還元的環化エーテル化によるA環の構築を逐次行って、ABCD環フラグメントの大量合成を行った。ついで、ブロモビニル基を有するエポキシスルホン誘導体から発生させたオキシラニルアニオンとの反応,続く6-エンド閉環反応によって6-員環ケトンを形成し、これを環拡大反応に付して7員環ケトンに変換することによりABCDE環の構築に成功した。ケトンを還元し不飽和エステル側鎖を導入したのち、ビニルラジカルによるラジカル環化反応によってエキソメチレン構造を有するF環を合成した。エキソメチレンのジオール化、エポキシドへの変換、還元開裂によって第3級アルコール構造を有するABCDEF環フラグメントの合成を達成した。今後は、3炭素単位からなるオキシラニルアニオンを2回反応させて、GH環を構築する予定である。
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