研究概要 |
パラジウム触媒によるビニルエーテル類の加アルコール分解反応において、2,3,4,5-テトラフェニルフェニル基を有するキラルジアミン配位子を用い軸不斉化合物の速度論的光学分割を行った。^1配位性官能基としてカルボニル基を用いた場合は立体的にかかさ高い置換基ほど高い選択性を示し、アダマンタノイル基でk_<rel>=29を示した。これに対し、ホスホリル基では立体的に小さい配位性官能基ほど高い選択性を示し、ジメトキシホスホリル基でk_<rel>=23の選択性が得られた。一方、スルホニル基では立体的に大きい配位性官能基ほど高い選択性を示し、2,4,6-トリイソプロピルフェニルスルポキシ基がk_<rel>=36の選択性を示し、この反応で最高の値となった。また一連の検討で、ホスホリル基やスルホキシ基の立体構造と選択性の関係を明らかにした。さらにこの反応を応用して、リン上にキラリティーを有する化合物の速度論分割を開発した。リン上にキラリティーを有する化合物は不斉合成が難しく、ジアステレオマーに導いて優先晶出させる古典的光学分割が用いられる。不斉触媒反応でリン上の不斉を制御した例はごく限られているが、今回、下記のパラジウム/キラルジアミン系触媒でこれに成功した。例えばt-ブチル(2-ビニロキシフェニル)ホスフィン酸フェニルエステルがk_<rel>=39で速度論分割でき、95%eeの未反応基質を回収することができた。基質の置換基の効果を検討したところ、メチル基などを導入してかさ高くすると選択性が低下するが、ハロゲンなどの導入により選択性が上昇することが分かった。例えば、p-フルオロ置換の基質ではk_<rel>=48に、p-フルオロ-m-クロロ置換の基質ではk_<rel>=61に向上した。こうした基質の不斉合成は、従来酵素反応などでしか制御できなかったものである。
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