研究概要 |
表面を利用した選択的触媒反応の制御を目的とし、酸化物表面や酸化物多孔体に固定化した固定化金属錯体をモチーフとした新しい触媒活性構造とその上の選択的反応空間の同時構築を行った。平成19年度は、特にシリカ表面に固定化した銅-ビスオキサゾリン錯体の表面空間を不斉を持たない有機官能基で化学的に空間修飾することにより、表面に固定化した不斉金属錯体上での不斉触媒反応の不斉選択性を制御できる現象を見出した。FT-IR,固体NMR, ESR, XPS, XAFSなどの表面構造解析手法により、表面の不斉反応空間と金属錯体の構造を明らかにした。更に、表面の有機官能基の種類と構造を変えて表面空間修飾錯体を合成し、そのDiels-Alder不斉反応の反応特性を調べることで、不斉を持たない有機官能基によりなぜ表面で不斉反応が促進されるのか、そのメカニズムを検討した。 我々が前年度開発に成功したベンゼンと酸素からのフェノール直接合成に世界最高触媒性能を示すゼオライト細孔空間内に固定化したRe10核クラスター触媒において、in-situ構造解析法を駆使して選択酸化触媒反応中におけるゼオライト細孔空間内の活性レニウムクラスターのダイナミック構造変化を世界で初めて解明し、フェノール直接合成反応における高選択性の要因を解明した。 シリカ表面に固定化したRu単核錯体を合成し、表面上で反応物の構造変化のエネルギーを利用してその配位子を選択的に脱離させる方法を見出し、選択酸化反応に高い活性を有する新規固定化錯体の設計に成功した。表面における金属錯体の構造、反応空間の構造解析を行い、表面で特異的に形成される触媒活性構造の反応特性を解明した。
|