研究概要 |
イオン性結晶M_3PW_<12>O_<40>(M=Cs,NH_4,Ag,以下MPWと略記)は,水溶液中で自己組織化して多孔性無機コロイド粒子を形成する.本研究では,カチオンの種類と合成温度を変化させることによりMPWの外形及び細孔構造を系統的に制御すること,合成溶液の濁度と集合体サイズの速度論的な解析により生成機構を解明すること,を目的とした.CsPWは10nm以下のナノ結晶子により形成され,ED(電子線回折)像がリングを示したことから,ナノ結晶子がランダムに集合すると考えられる.NH_4PWはサブミクロンサイズの球状粒子であり,ED像はスポットを示し,BET比表面積が91m^2g^<-1>と大きいことから,ナノ結晶子の集合体であると考えられる.AgPWは緻密な菱形十二面体結晶である.以上の結果より,MPWは以下の三つに分類される:(a)ランダム集合体(CsPW),(b)自己組織化集合体(NH_4PW),c単結晶(AgPW).次に,MPWの生成機構の解明を目的として,NH_4PWを例にとり,合成溶液の濁度と集合体サイズのフィッティングを行った.(i)溶質(A)からナノ結晶子(B)の生成(A→^^<k_1>B),(ii)ナノ結晶子から集合体cの生成(B+B→^^<k_2>C),(iii)集合体の外形成長(B+C→^^<k_3>C),という三段階の生成機構を仮定して速度式を導き,k_1-k_3をパラメーターとして濁度のフィッティングを行った.k_1-k_3を用いて集合体サイズを計算すると実験値がよく再現され,MPWの生成機構は(i)-(iii)で説明されると結論した。(J. Am. Chem. Soc.2007)
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