研究概要 |
本研究では、チオール型配位子を用いたキラルな錯体配位子の合成、ならびにこの種の錯体配位子と各種金属イオンとの反応による混合金属型キラル配位空間の創製について検討した。 含硫アミノカルボン酸であるD-ペニシラミン(D-H_2pen)が硫黄単座でHg^<11>に配位したチオラト単核錯体([Hg(D-Hpen-S)(D-H_2pen-S]^+)を合成した。この水銀(II)錯体は、対応する金(I)酸錯体([Au(D-pen-S)_2]^<3->)と同様に、配位チオラト基に加えてフリーのアミノ基およびカルボキシル基を用いて金属イオンに配位すると期待される。 しかし、Pd^<11>との反応では、D-pen配位子がHg^<11>からPd^1へ転移し、3分子のD-penが3つのPd^11を連結した環状三核錯体([Pd_3(D-pen-N,O,S)_3])が形成された。また、この環状三核錯体は、結晶中において、水素結合により層状に配列し、上下に親水性と疎水性の配位空間を形成することも見出した。 L-システイン(L-H_2cys)をもつチオラト単核錯体(Δ_1-or ∧_L-[Co(L-Hcys-N,S)(en)_2]^<2+>)にHg^11を反応させることにより、2つの非配位カルボキシル基をもつ硫黄架橋三核錯体([Hg{Co(L-Hcys-N,S(en)_2}_2]^<6+>)の3つのジアステレオ異性体(Δ_LΔ_L、∧_L∧_L、∧_L∧_L)を合成した。このうち、∧_L∧_L体は脱プロトン化により自己集積化し、チューブ状の配位空間をもつ一次元ヘリックス構造を形成することを見出した。
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