研究概要 |
表面ではバルクとは反応性など全く異なるので,表面を利用すれば,バルクとは全く異なる物質が調製でき,それを活性点とした,特異反応場を構築できるものと期待できる.特に,規則性空間を有する物質表面に担持された金属イオンは他では見いだせないような特異な物性(活性点として働く)を発現させることがわかってきた.ただそれだけではなく,その表面状態を,粉体試料でさえ,かなり詳細に解析できる状況(単に,担持された結果による効果としてではなく,それらの詳細が解明できる段階)になってきている段階である.我々は規則性空間を有する固体無機化合物表面の活性点の状態の解析・デザインを目指している.本課題では,銅イオン交換ゼオライト(CuMFI)を利用した窒素,水素,酸素などの小分子の特異な吸着・活性化現象に焦点をあてた研究を行った. 我々は無機固体化合物表面におけるガスの吸着特性に関する研究を行ってきた.その研究過程で,室温での窒素の吸着現象を見いだした.臨界温度が126.2Kの窒素が室温で,数十秒以内に,強く吸着される特異な現象(化学吸着さえ超こる)である(赤外不活性な窒息でさえ,吸着種による赤外線吸収バンドが観測される).通常,室温でこのような現象を示す安全な物質は,我々の知る限り,存在しない.これらの現象においてはCuMFI中のCu+が活性サイトとして働いていることを明らかにしてきた.そのような種はCu_2Oのバルクやその表面では存在しない種である.また,銅イオンを担持したシリカを真空熱処理した試料においても,N_2に対して吸着の特異性を全く示さないのである.さらに,CuMFI中のCu+の状態は,配位化合物中のCu+とも全く異なる電子状態を有することも明らかになってきた. 上述の研究過程で,室温で極めて強く,しかも数十秒で,吸着される酸素種に帰属可能な特異な種も見出した.これは,CuMFIを利用した酵素モデル型触媒,あるいは新しい酸化触媒としての可能性のある現象と判断し,研究を進め,大変興味深い実験事実を見い出すに至っている.
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