研究概要 |
複合金属シアン化物錯体触媒(DMC触媒)は多価アルコールにプロピレンオキシド(PO)などのエポキシドを重合させる触媒として知られているが,その真の触媒活性種や反応機構は現在まで明らかになっていない。本研究では亜鉛が触媒活性中心となっているとの推測のもと,種々のN-Nアミンキレート配位子をもつ亜鉛錯体である,ZnN_3Cl_2,[ZnN_4Cl]^+,ZnN_4]^<2+>タイプの錯体を合成し,POの重合活性を調べた。その結果AgN0_3やTMSOTfなどの助触媒をジクロロ錯体に対しては2当量,モノクロロ錯体に対しては1当量用いると触媒活性を示すことが明らかとなった。これより,[ZnN_3]^<2+>タイプの錯体が触媒活性を示すことが示唆された。 次に,N-Oキレート配位子を有する亜鉛錯体について検討した。8-ヒドロキシキノリンとZnEt_2との反応ではこの配位子が架橋した直線型3核および4核錯体が生成するのに対して,2-メチル8-ヒドロキシキノリンとZnEt^2との反応では面共有ダブルキュバン構造の対角2頂点が欠けた不完全ダブルキュバン構造の錯体が生成することをX線構造解析により明らかにした。この錯体は,溶液中では徐々に配位子架橋折れ曲がり型3核錯体へと変換するが,InBr_3との反応では8員環4核錯体が生成することがX線構造解析により明らかになった。PO重合触媒能については,不完全ダブルキュバン錯体は全く触媒能を示さないのに対して,8員環4核錯体については0.5mol%を使用して10gのPOがほぼすべて重合する高い触媒能を有することが明らかになった。
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