研究概要 |
集団的な運動を伴う水分の挙動は生体内の構造水、物質表面に結合した表面水あるいは細孔内のゼオライト水をはじめ、地球内部や地球外惑星などの極限状態にある水も含めて、現在でも分野間の枠をこえて盛んに研究されている。さらに、最近の理論科学的な発展から、新しい水の挙動が々と明らかにされている。例えばCarbon-Nanotube内の狭い空間に取り込まれた水の運動は、その狭い環境のために水から氷になる相転移が臨界点(Nature, 412, 802(2001))をもち、水分子としての連続的な相変化が観測されることや水が空孔内に導入される時にチューブ内の疎水性ナノ環境の影響で時間無しで取り込まれ、水分子の水素結合鎖を作ること(Nature, 416, 409(2002))が予想されている。これに対して実験的な検証が行われ、チューブ内の水分子は理論でははっきりと予測できなかった室温で氷化転移を起こすことが確認された。(Chem. Phys. Lett., 401, 533(2005))現在、このような特殊な媒体中で理論と実験の両面から極限状態の水の性質が明らかにされつつある。本研究では新たに組み上げられた分子性の超分子ナノ細孔内で、水の集団的な挙動を示な水分子クラスター作り上げ、その水のクラスターの特性を構造科学的に明らかにしようとするものである。合成化学的に作り上げられた巨大な水のナノクラスターを分子論的なアプローチから変化させ、その相転移などの水の物性との構造相関を明らかにしようとするものである。水の性質を詳しく調べるための方法論として、化学的に水を種々のクラスターに分割し、そのクラスターごとに性質を調べる方法がある。水の性質をバルクの水として捕らえるのではなく、水分子の集合体(水クラスター)がバルクの水や氷の性質を決めていくものと捉えることである。合成化学的なアプローチによってナノスケールのチャネル型空孔をもつ分子性多孔質結晶を構築し、その細孔内に閉じこめられたくラスター水(Water Nanotube)の構造制御や機能性を在実験室レベルで明らかにした。
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