研究課題/領域番号 |
18033053
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小寺 政人 同志社大学, 工学部, 教授 (00183806)
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研究分担者 |
船引 卓三 同志社大学, 研究開発推進機構, 客員フエロー (70026061)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2007年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2006年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | ナノ構造多核金属錯体 / 閉環メタセシス反応 / 大きな疎水ポケット / 置換活性金属 / Grubbs触媒 / cage型ナノ構造多核金属錯体 / 12核構造 / 三核銅錯体 / オレフィン閉環メタセシス / 構造安定化 |
研究概要 |
本研究は、内部に大きな配位空間を持つナノ構造多核金属錯体の構造安定化を目的としたものであり、構成要素である三核銅錯体の閉環メタセシス反応による構造安定化に関する研究を行った。タンパク質は様々な大きさの基質結合部位を持ち、基質を特異的に結合して反応を促進している。タンパク質の基質結合部位と類似の様々な大きさの疎水ポケットをもつ多核金属錯体が多数報告されてきた。しかし、これらの金属錯体が溶液中で安定な構造を維持するためには、置換不活性な金属を用いなければならない。そのために、これらの錯体には、多くの場合、白金などの金属が用いられてきた。一方、金属タンパク質のほとんどは鉄、亜鉛、銅などの第一遷移系列の置換活性金属をその活性中心にもち、速やかな配位結合の生成を通して反応を促進している。従って、金属タンパク質の機能を再現する金属錯体を構築するためには、これらの置換活性金属を用いて内部に大きな配位空間を持つナノ構造多核金属錯体を構築する事が期待される。我々は、従来の研究で内部に大きな配位空間を持つ十二核銅錯体の合成に成功した。しかし、銅イオンは置換活性金属であるためにこの錯体は水溶液中で配位子と水分子の配位交換が容易に起り、十二核構造を維持する事は出来なかった。そこで本研究では、その構成要素である三核銅錯体を閉環メタセシスによって構造安定化する方法の確立を試みた。具体的には、2つのピリジル基の6位にアルケニル基を導入したジピリジルメタノール配位子を合成し、これを用いて三核銅錯体を形成させた後、第一世代のGrubbs触媒を用いてメタセシス反応により炭素-炭素二重結合をつなぎ合わす閉環メタセシス反応を行った。反応条件の最適化と反応により生じるエチレンガスの減圧除去により、ほぼ定量的に閉環メタセシスを進行させる事に成功した。また、アルケニル基の炭素鎖の長さは C4-C6について検討したが、C4のブテニル基が最も良好な結果を与えた。ここで用いられた三核銅錯体は全て単結晶構造解析により、その構造を決定した。ブテニル基を持つ錯体の場合、閉環メタセシスの前後で三核銅中心の構造はほとんど変化せず、閉環メタセシスの前後で銅の配位構造は維持された。また、メタセシス反応によって新たに形成された炭素-炭素二重結合は全てシス体であった。これにより、3対のブテニル基がシス型二重結合の生成に最も適する配置をとっている事がわかる。一方、閉環メタセシス反応を高濃度の条件で行うと分子間のメタセシス反応が進行する事がわかった。分子間の反応では、生成する二重結合はトランス体であった。ここで得られた錯体を脱金属して配位子を精製した後に、再度銅錯体を形成させると、2つの三核銅ユニットがつながった六核銅錯体が生成した。本研究は、ナノサイズの多核金属錯体の合成法の開発につながる新たな方法論を提供するものとして重要である。
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