研究概要 |
本研究ではガス分子内包フラーレンの構造物性研究を放射光X線回折実験により行った。C_<60>は室温付近では自由回転をしており,原子位置を含めた解析は難しいが,250K以下では一軸のラチェット回転型の自由度のみに限定されるため,二つのC_<60>方位に限定する占有率を含めた構造解析を行うことが可能である。精密な格子定数の測定によって,Ar元素が内包されたときに見られた転移温度以下での熱膨張係数の空のC_<60>結晶との差は,水素分子の場合には見られず内包の影響が極めて小さいことがわかった。水素内包C60の内包純度を中圧クロマトによって99.9%以上に高め,この原料を用いて単結晶試料を作成した。この単結晶試料及び空のC60の単結晶試料の両方について精密な解析を行った。 この結果,過去に報告のなかった単結晶C60の精密構造解析に加えて,内包状態を正確に見積もることが可能な電荷密度解析にも成功した。この結果,水素分子の場合には空の場合と炭素骨格の結合長や結合角度などが誤差の範囲以内で一致しており,さらにC60ケージ間の配置についても水素内包の影響が認められないことが明らかとなった。このことは,Ar内包の場合とは異なっていることから,内包ガスの分子種によってRb,Kをドープした超伝導体の転移温度の影響が大きく異なることが説明可能となった。
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