研究概要 |
DT燃焼プラズマにおける燃料イオン比計測手法のうち,中性子スペクトロメトリに基づく手法はDD/DT核融合反応から発生するDD中性子(2.45MeV)とDT中性子(14.1MeV)の強度比から算出するものであり,中性子の高い透過性を利用してプラズマ中心付近のモニタリングに有利である.本研究では高出力領域での燃焼D/T比(プラズマ中で燃焼したD/T比)測定に特化した中性子スペクトロメータとして,二結晶型飛行時間法をベースに,飛行時間を測定する結晶対の前に中性子散乱体を挿入した多重散乱飛行時間中性子スペクトロメータの開発を行っており,昨年度までに加速器DT中性子源を用いたDT中性子中に約1%程度混入するDD中性子の検出に成功しでいる.しかしながら,二結晶型飛行時間法は二つの結晶間での同時計数手法に基づいていることから,ガンマ線などによるランダムな事象による偶然同時計数が中性子検出のバックグラウンドとなる.そこで今年度は中性子検出の信号/バックグラウンド比向上を目的に,中性子-γ線弁別回路を導入することでガンマ線起因のバックグラウンド低減を目指したシステム改良を行った.改良後の検出器性能を評価するために日本原子力研究開発機構FNS加速器DT中性子源を用いて実験を行った結果,ガンマ線起因のバックグラウンド(偶然同時計数)を約97%低減することに成功し,今回の改良の有用性を実証した.また,本中性子スペクトロメータを国際熱核融合炉ITERへ搭載した場合を想定し,モンテカルロシミュレーションによってDD中性子検出の計数統計を評価し,実機運転時に期待されるサンプリングタイムを算出した結果,DD/DT中性子強度比測定の計数統計20%を得るのに必要なサンプリングタイムは,中性子-γ線弁別回路導入前の8.5sに比べ導入後は1.9sと大幅に改善する見込みがあることが示された.
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