研究概要 |
我々はこれまでに我が国の数少ない完全オリジナルな第一原理計算手法として「全電子混合基底法」を開発し、密度汎関数理論の枠組みを越えて、グリーン関数(G)とRPA遮蔽クーロン相互作用(W)を用いた多体摂動論に基づくGW近似により、Geクラスターの準粒子エネルギー・スペクトルの全電子計算を行った(Physical Review B 74,195410;1-6(2006))。また、GW近似から1電子グリーン関数を決定し、これに基づいてさらにT-matrix理論により梯子図形の無限次までの和を取り入れ、2電子間のクーロン相互作用による電子間の多重散乱効果を取り扱い、2電子グリーン関数を求めるプログラムを開発し、原子・分子のダブルイオン化エネルギー・スペクトルに続いて2電子波動関数を精密に決定することに成功した(J.Chem.Phys.125,114108;1-6(2006))。また、この計算手法をTTTAラジカル分子結晶に応用し、高温相のMott絶縁相におけるオンサイトクーロンエネルギーUを見積もり、電子間の強いクーロン反発によりクーロン孔が生じ、これがUの値を大きく減少させることを示した(ChemPhysChem.7,1820-1824(2006))。さらに、時間依存密度汎関数理論による全電子分子動力学シミュレーションにより、Li_2とCH_4のナノコンポジットにおける光捕集機能のダイナミックスを調べることにも成功した(J.Chem.Phys.125,054501;1-6(2006))。
|