研究概要 |
従来の多くの超臨界及び水熱状態の水での有機反応は,1)高温・高圧反応条件に疎水性相互作用が加わることによりはり強化された」反応条件となることを利用するものと,2)加熱によりイオン解離平衡のイオン側への傾きが大きくなり,酸を加えることなく高温状態で生じるプロトンを酸触媒として用いるもの,この2種類に分類することができる。しかし,ここに遷移金属触媒を加えた場合,高温水による触媒の酸化が起こり,C-H結合活性化を軸とする分子変換反応が水を酸化剤として行なえる可能性がある。この活性種を用いて,芳香族化合物・複素環化合物の軽水素-重水素交換反応を可能とし,複素環化合物において完全重水化体を収率よく得ることができるようになった。反応は,水熱反応専用オートクレーブ中に基質と2-5mol%の酸化白金を加え重水中で250℃に加熱することで行い,得られた生成物の重水素化率は重水素核NMRにより求めた。これらの複素環化合物の中には,光学/電子材料として有用なものも多い。また,C-H結合活性化反応を経て生成した有機遷移金属化合物中間体を重水素交換だけではなく,炭素,チッ素等のヘテロ原子導入反応に使用する反応を行なった。この反応には,反応後生成する低原子価遷移金属を再酸化する経路が必要となるが,再酸化経路に水そのものを用いることを可能とした。この反応を利用し,ビフェニルアミン,ジフェニルアミンより,水を酸化剤として用いて白金により環化反応を可能とし,カルバゾールを合成した。
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