研究概要 |
1.1,2-ジアリール-3,4-ジホスフィニデンシクロブテン配位子(DPCB-Y)をもつ一連のカチオン性パラジウム(II)およびロジウム(I)錯体を合成単離した。[Pd(MeCN)_2(DPCB-Y)]^<2+>錯体はα,β不飽和ケトンとカルバミン酸ベンジルとの共役付加反応(エノンのヒドロアミド化反応)に対して特に高い触媒活性を示した。同様の触媒活性は[Pd(MeCN)_4]^<2+>について報告されているが、触媒の活性と安定性の両面においてDPCB-Y錯体が優れていた。この触媒反応は、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等の二座ホスフィン配位子では全く進行せず、低配位リン化合物であるDPCB-Y配位子の特異性を示す結果と言える。 2.DPCB配位子をもつヒドリドパラジウム錯体を触媒活性種として用いることにより、2-ブテン-1,4-ジオールと活性メチレン化合物との脱水環化反応が起こり、2-ビニル-2,3-ジヒドロフラン誘導イ本が生成した。ピリジンを助触媒として添加し、活性メチレン化合物のエノール化を促進することにより、最高91%の単離収率で目的生成物を得ることができた。 3[Ru(μ-Cl)(Cl)(CO)(DPCB-Y)]_2と水およびヒドロシランとの反応により、シラノールの副生を伴ってヒドリドルテニウム錯体[RuH(Cl)(CO)(DPCB-Y)]が合成された。この錯体は極めて不安定であったが、PPh_3を用いて[RuH(Cl)(CO)(PPh_3)(DPCB-Y)]として捕捉し、単離同定することができた。 4[IRh(μ-OH)(DPCB-Y)]_2とヒドロシランとの反応より[Rh_2(μ-H)(μ-OH)(DPCB-Y)_2]が生成した。この錯体はギ酸との反応によってさらに[Rh(μ-H)(DPCB-Y)]_2へと変換され、ジエンの存在下ではπアリル錯体を与えた。
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