研究概要 |
研究課題名どおりの成果を得ることはできなかったが、1.ニッケラサイクルからのβ炭素脱離を経由するビシクロケトン合成反応、2.ロジウムシクロブタノラートからのβ炭素脱離を経由するラクトン合成反応を開発することができた。 1.ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)とトリシクロヘキシルホスフィンから調製した触媒存在下、3-(2-ビニルフェニル)シクロブタノンをトルエン中100℃で加熱したところ、ベンゾビシクロ[2.2.2]オクテノンが90%収率で得られた。本反応は、(i)Ni(0)上でのシクロブタノンのカルボニル基とビニル基の酸化的環化によるオキサニッケラシクロペンタンの生成、(ii)β炭素脱離によるビシクロニッケラサイクルの生成、(iii)還元的脱離を経由して進行している。ロジウム触媒存在下では、ビシクロ[3.2.1]オクテノンが得られることを既に報告しているが、同一基質から触媒を変えることによって全く異なる炭素骨格が形成できる点は興味深い。 (2)ヒドロキソ(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー(7mol%)、(R)-SEGPHOS(16mol%)から調製した触媒存在下、3-(2-ヒドロキシフェニル)シクロブタノンをトルエン中室温で反応させたところ、4-メチル-3,4-ジヒドロクマリンが77%収率、>99%eeで得られた。本反応は、(i)ロジウムァルコキシドの生成、(ii)シクロブタノンのカルボニル基への分子内付加によるロジウムシクロブタノラートの生成、(iii)不斉β炭素脱離によるアルキルロジウム種の生成、(iv)β水素脱離/再付加によるロジウムエノラートの生成、(v)プロトン化分解を経由して進行している。3位に置換基を持っ基質からも最高94%eeでベンジル位に不斉四級炭素を有する3,4-ジヒドロクマリンが得られた。
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