研究概要 |
我々は既に(R)-BINOLより合成した環状リン酸ジエステルが,キラルブレンステッド酸触媒として高い不斉触媒能を有していることを見いだしている。今回この環状リン酸ジエステルを触媒として用いて,エナンチオ選択的な付加環化反応による含窒素6員環化合物の不斉合成について検討した。 電子豊富なジエンとして,反応性の高いBrassard'sジエンを用いて,イミンとの反応を検討した。3,3'位に9-アントリル基の置換したリン酸ジエステルを10mol%用いることにより,アザDiels-Alder反応が速やかに進行し,対応するδ-ラクタムが98%ee以上の高い光学純度で得られることを見いだした。 更に,リン酸ジエステルのピリジン塩を触媒として用いることにより,さらに収率が向上した。これは,ピリジン塩を用いることにより,酸性度が低くなり,反応性が高く不安定なBrassard'sジエンの系中での分解が抑制されたためと考えられる。こうして得られたδ-ラクタムは容易に官能基変換が可能であり,様々な,ピペリジンアルカロイド等の不斉合成に適用できる可能性を秘めている。 これまで,brassard'sジエンとイミンとの不斉アザDies-Alder反応は,光学活性なイミンを用いたジアステレオ選択的な環化反応は,Waldmannらにより報告されているものの,エナンチオ選択的な触媒的不斉触媒反応はこれまで報告例がなく,今回初めて見いだすことができた。 以上,本研究により,キラルブレンステッド酸触媒の新たな展開を見いだすことができた。
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