研究概要 |
光学活性コバルト錯体をルイス酸触媒として用いると,N, N・ジフェニルアミノメチルオキシランへの二酸化炭素挿入反応が速度論的光学分割を伴って進行し,対応するエポキシドと環状炭酸エステルがそれぞれ光学活性体として得られることをこれまでに報告した。本年度は立体選択性のさらなる向上,基質の展開を目的に詳細な検討を行った結果,コバルト錯体の不斉ジアミン部にシクロヘキサンジアミン,側鎖に直鎖のエステルを有するコバルト錯体が最も良い結果を与えることを見いだした。反応圧力,共触媒の最適化の後,種々のエポキシドに対して二酸化炭素挿入反応を行った結果,様々なグリシドール誘導体が対応する光学活性な環状炭酸エステルに変換され,特にグリシジルアミン類の反応では高い立体選択性が発現することがわかった。 二酸化炭素の固定化における次の展開として,プロパルギルアルコールへの触媒的な二酸化炭素固定化反応を試みた。プロパルギルアルコールは二酸化炭素と反応し,環状炭酸エステルを与えることは知られているが,高温・高圧の条件が必要であること,適用可能な基質は末端アルキンに限定され,かさ高い置換基を有する第3級アルコールの場合には反応性が著しく低下することが指摘されていた。アルキンを活性化する金属種について探索した結果,金属触媒として銀塩,塩基としてDBUを用いると温和な条件で反応が速やかに進行することがわかった。この触媒系は,末端アルキンのみならず従来法では困難とされていた内部アルキンを有する多置換プロパルギルアルコールに対しても速やかに二酸化炭素との反応が進行し,かさ高い置換基を有するプロパルギルアルコールの場合にも高収率で,しかも単一の異性体として環状炭酸エステルを与えることを見いだした。
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