研究概要 |
ヒト組織再構築中に生じる環境的ヘテロ集団(不均一性),細胞的ヘテロ集団(不均質性)に対する分業組織の解明を目指し,細胞レベル(微視的レベル,μmオーダー)での増殖・分化の現象を局所把握かつ1細胞ごとに生じるイベント(分裂・遊走・物質生成)を生物的パラメータにて整理した.さらに空間的・時間的積分することにより,細胞間のコミュニケーションを加味した組織レベル(巨視的レベル,mm, cmオーダー)で集塊増殖,分化,シグナリング,力学的強度解析の方法論を構築することを目指した. 平成18年度では,ウサギ硝子軟骨のゲル内包埋培養を対象に,硝子軟骨組織の再構築過程を検討した.特に,「ヘテロな集団内での分業組織の解明」の方法論構築を目指し,受動的集塊形成に含まれる硝子軟骨組織の再構築過程を対象とし,環境的ヘテロ集団が及ぼす影響を(1)細胞評価;細胞形態,遊走性,(2)増殖指標;細胞数や細胞集塊の形成能力,(3)分化指標;細胞外マトリックス生成,(4)組織の質的評価指標;細胞集塊の空間分布,マトリックス分布,さらには,細胞の機械的強度を評価する方法を構築した.特に,ウサギ軟骨細胞の播種密度が低いときには,細胞の紡錘形への形態変化,遊走がみられ,緩い集塊形成が促進されることを見出した.緩い集塊においては,II型コラーゲンの生成が見られなかった.一方,通常の播種密度においては,細胞の遊走は観察されず球形を呈し,分裂により,密な集塊を形成し,II型コラーゲンを生成することがわかった.さらに,細胞的ヘテロ集団が及ぼす影響を,分化細胞と脱分化細胞に分けて解析を実施し,混在する環境での分業組織の解明を行った.脱分化した細胞は,紡錘形を示していた.紡錘形の細胞は,II型コラーゲンを生成せず,球形の分化細胞のみが軟骨組織形成の上で有効な細胞であることがわかった.
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