研究概要 |
(1)フーリエ変換限界の性能(時間分能約2.2ピコ秒波数分解能約4cm^<-1>)を持つピコ秒時間分解赤外吸収測定装置の改良と拡張 ピコ秒チタン・サファイア再生増幅器の基本波出力を用いて光パラメトリック発生・増幅器を励起した.光パラメトリック発生・増幅器からのシグナル光出力とアイドラー光出力の差周波発生により,波数範囲4000-1000cm^<-1>にわたって,波長可変なピコ秒パルス赤外光(約2ピコ秒)を得た.本研究では,(1)高性能な赤外ビームスプリッター(分配比1:1)を追加し,(2)新たな信号処理アルゴリズムを採用することにより,S/N比の大幅な向上を達成した. (2)自己配列したポリ(3-アルキルチオフェン)のピコ秒時間分解赤外吸収スペクトルの測定と励起電子-分子振動相互作用の解析 立体規則性のあるポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)をクロロホルム溶液からスピンコート法によりCaF_2基板上に成膜した.このP3HTのスピンコート膜をクライオスタットのコールドヘッドに装着し,77.5Kにおいてピコ秒時間分解赤外吸収を測定した.2500cm^<-1>において測定したピコ秒時間分解赤外吸収には,光励起直後の速い減衰を示す成分と,その後の遅い減衰を示す成分が観測された.短寿命成分は"電子励起状態"と"電荷分離後に生成した正のポーラロンと負のポーラロンが鎖間相互作用している状態(束縛ポーラロン対)"のどちらか一方またはその両方に帰属され,長寿命成分は"完全に電荷分離したフリーな正・負のポーラロン"に帰属されると考えている.今後,異なる遅延時間においてピコ秒時間分解赤外吸収スペクトルを測定することで,長寿命と短寿命の過渡種を同定し,光励起ダイナミクスを明らかにしていく予定である.
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