研究概要 |
ポルフィリンデンドリマー、ポルフィリンオリゴマー、ポルフィリン修飾金ナノ粒子などのポルフィリン組織体とフラーレンを酸化スズ電極上に逐次組織化した光電変換系では、光電流発生の高い外部量子収率が達成されることがわかっている。しかし、これら化合物の合成は、一般的に難しく、実用化を考慮すると、より簡便な方法で分子の組織化を制御できることが望ましい。そこで、我々は、5,10,15,20-テトラフェニルポルフィリン(TPP)のフェニル基上の置換基効果を検討することで、ポルフィリン・C60複合クラスター内での分子配列を制御し、複合クラスターを泳動電着させた電極の光電変換効率を向上できることを見出した。特に、メソ位上のフェニル基のメタ位にメトキシ基を導入した場合、複雑な系よりも、単純な分子系で高い外部壁子収率を達成できることがわかった。本複合系では、錯体中で超高速の電荷分離が生じた後、ホールと電子は、それぞれ、ポルフィリンが形成するホール輸送ナノ経路、C60が形成する電子輸送ナノ経路を通って運ばれることで、高い光電変換特性が発現していると考えられる。このような電子輸送ナノ経路の構築がバルクヘテロ接合太陽電池の高効率化に重要であることが今までに提案されていたが、その構造は分子レベルで解明されていなかった。今回の結果は、その有用性を実験的に示した初めての例であり、今後の有機太陽電池の分子設計に重要な指針を与えるものと考えられる。
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