研究概要 |
共役系の電子構造制御による多機能階層の創製を目的とした電子構造に段差を有する次世代ナノ共役系の構築として,以下の研究を遂行した。 1.チオフェン4量体と9量体を基本骨格として,1,3,5-トリ置換ベンゼンを分岐部とする自己会合性デンドリマー型オリゴチオフェンとアクセプター性[60]フラーレンの各種連結分子の合成を達成した。特に段階的に二置換フラーレン誘導体の合成にも成功した。還元電位測定から,デンドリマーの特異な被覆効果が見出された。FET素子評価によって,デンドリマーの世代と置換数に依存して,両極性が出現するという興味深い特性を明らかにした。 2.ドナー性デンドリマー型オリゴチオフェンに基づいた光電変換素子に応用可能な分子として,デンドリマー末端にアクセプター部位として複数のペリレンビスイミドを導入した化合物の合成を達成した。各種スペクトル測定から,光誘起分子内電子移動を示唆する結果が得られ,階層構造を有する光電変換材料として有望であることが分かった。 3.オリゴチオフェンを基盤とするn-型半導体の開発研究として,ヘキサフルオロシクロペンテン縮環チオフェン,および,ジフルオロメチレン架橋ビチオフェンを新規な電気陰性モノマーユニットとして開発に成功した。これらを基本ユニットとする拡張共役オリゴマーの合成に成功し,詳細な物性評価を行った。これらのうちの幾つかは,真空蒸着法で作製した電界効果トランジスタ素子において良好なn-型特性を示した。
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