研究概要 |
我々は,エルビウム(Er)による発光を増強する効果を持つシリコンナノ結晶(Si-nc)と,群速度の制御が可能なフォトニック結晶導波路とを融合させることにより,高効率なEr系光増幅デバイスの実現を目指している。今回は,その基礎検討として,まずSi-ncの光増幅特性の向上を目指し,Si-ncスパッタ膜へのEr導入,(2)イオン注入法によるSi-ncの形成,及びSi-ncスパッタ膜への周期構造の加工を試みた。 Siイオン注入によって形成されるSi-ncは,赤色から近赤外域の発光し,かつ100cm^<-1>というIII-V族半導体に匹敵するほどの大きな光利得が観測されていることから,光増幅デバイス用材料としての応用が期待できる。今回我々は,溶融石英基板にSiイオンを注入し,その後1100℃〜1250℃でアニール処理を行うことで,波長400nm付近をピークとする青色発光が発現することを新たに見出した。今後,光利得の評価を行っていく予定である。 また,Si-nc薄膜にErをドープすることで,波長1.5μm帯において高効率な光増幅作用が得られることが知られている。そこで我々は,SiとSiO_2,及びEr_2O_3を同時スパッタしてErのドープを試み,空気中で550℃のアニール処理後,Arレーザ(波長488nm)での励起により波長1.5μm帯に発光ピークを確認した。現在,光増幅効率の向上のため,作製条件の最適化を進めている。 更に,我々が作製するSi-ncスパッタ膜とフォトニック結晶との融合に向けた初期検討として,二重干渉露光法とECRエッチングにより,二次元周期構造の加工を試みた。作製した周期構造の格子周期は,AEM観察を行った結果,設定値800nmに対し800〜820nm程度であることが確認でき,ほぼ狙い通りであった。
|