研究概要 |
本研究は1個の分子を金属電極間に架橋させた「ナノリンク分子」を形成し,その高バイアス/高電流下における不安定化現象を実験的に考究するとともに,破断電圧/電流のデータベースを構築することを目的としている.平成19年度は18年度に行ったベンゼンジチオール(BDT)単分子架橋の実験をビピリジン(BPY)に拡張し,コンダクタンスやI-V特性,および破断,に関して以下の成果を得た. 1.室温でMCBJの金電極にBPY単分子を架橋し,そのコンダクタンス測定を行った.BPYはBDTよりも安定な架橋を得る頻度が少なく,コンダクタンスヒストグラムもそれほど明瞭なピークを示さない.0.01GO付近にブロードなピークが観測され,この値は従来報告されているBPY単分子のコンダクタンスの実験値とほぼ一致していることから,この0.01GO状態がBPY単分子の架橋状態に対応していると推定される. 2.接合が0.01GO状態に達した時に,接合状態を保持したままバイス電圧をスイープしてI-V測定を行った.I-V曲線はBDTのI-V曲線とは少し形状が異なり,3次関数では記述できない.またBDTの0.01GO状態の場合よりも低い電圧で電流が立ち上がる傾向を示している. 3.首都大学東京の杉浦先生から試料を提供いただいて,数種類のポルフィリン分子のコンダクタンス測定を行った.コンダクタンスプラトーは時折観測されるもののヒストグラムに明瞭なピークを示すことはない.しかし(0.005〜0.02)GOの範囲に小さな構造が観察され,単分子コンダクタンスに対応している可能性がある.
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