研究概要 |
分子を用いた電子素子の開発する際,従来の電子回路を構成している素子,例えば抵抗,コンデンサ,ダイオード,トランジスタ等の役割を分子に担わせることを目標とすれば,その分子設計が容易となる。電子回路を構築する際,電子への摂動を与える素子の重要性は言うまでも無いが,電子を輸送する配線は,回路全体を作り上げる基盤技術として必要不可欠である。本研究では,実用に耐え得る配線素子(分子ワイヤー)の実現を目指し,両末端にポルフィリンを連結させたオリゴアセチレンの合成と機能評価を行った。具体的には,ワイヤー状分子の合成とその機能評価の二つのステージから構成した。標的とするワイヤー分子は,アセチレン自身が酸化状態でカップリングし易いことに着目し,アセチレンを10個有したポルフィリン単量体をまず合成し,然るべき化学変換を行ない,目的化合物へと導いた。尚,オリゴアセチレンの合成化学は,100年以上に亘って合成化学者の興味を惹きつけてきたが,現在までに14個の合域までしか報告がなされておらず,合成化学の観点からも,画期的な合成である。得られた分子の電気伝幸度測定を試みたところ,当初計画していた走査トンネル顕微鏡を用いる手法では,目的とする現象を観擦するに至らなかった。そこで,近年,実験の再現性が向上しつつあるBreak Junction法を用いることにした。その結果,もっとも短いワイヤー分子では0.01G_0という単分子としては著しく高い電気伝導度を示す結果が得られた。
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