研究概要 |
ストレンジネス量子数-2を持つハイペロンΞ^-と核子の相互作用を決定するべくも入射運動量1.65Gev/cにおける^<12>C(K^-,K^+)反応の解析を行った。特に今年度は、2段階過程(核内における2粒子の相互作用が2回はたらく高次の過程)の寄与を定量的に確定すると共に、解析対象を^27Al(K^-,K^+),^<63>(CuK^-,K^+)へと拡げ、得られる結論が^<12>C標的の反応解析の結果と整合することを確認した。また、当初の予測通り、中重原子核を標的とする反応では、2段階過程の寄与が本質的に重要であることが明らかになった。 次に、終状態がハイパー核の束縛状態となる場合に対応する移行エネルギー領域の分析を深め、この短寿命の束縛状態が、スペクトルとして実際に観測されるために必要な実験のエネルギー分解能を評価した。この知見は、大強度陽子加速器施設(J-PARC)での今後の実験計画にとって極めて有用であると考えられる。 一方、理論的な分析としては、本研究の特色である、核内における素過程の運動学の正確な取り扱いについての掘り下げを行い、素過程の断面積が持つエネルギー依存性と照らし合わせて、運動学の重要性をより深い観点から明らかにした。 現状では、理論計算に用いるパラメータの不定性や、(K^-,K^+)反応の実験データが持つ誤差を考慮すると、反応解析によってΞ^-粒子と核子との間の相互作用を決定することはできないという結論が得られたが、本研究によって、原子核内部におけるハイペロン生成反応を量子力学的に記述する手法として、母も信頼性の高いものを構築することができた。この手法は、今後J-PARCにおいて盛んに測定される(K^-,K^+)反応の解析で、主導的な役割を果たしていくものと期待される。
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