研究概要 |
平成18年度の検討では,無溶媒系で,アミン窒素にプロトンが結合したイオン対であるアンモニウム=ポリフルオロアルカノアートのKolbe電解を検討し,電解の進行に合わせて基質カルボン酸を導入し,RfCO2-・R3N-H+/RfCO2H=1/10(mol/mol)を維持しながら電解を行えば,生成物Rf-Rfは基質-指示塩液相の下相として分離し,セル底部から連続的に引き抜くことができた。また,得られた生成物Rf-Rf は,後処理等を行わなくても95%以上の純度であった。 19年度の検討は,イオン液体中でのポリフルオロアルキルラジカルの発生と補足に焦点を絞って実施した。これまでKolbe電解脱炭酸により発生するポリフルオロアルキルラジカルは電極近傍で再結合してしまうため、合成化学的にラジカル源として利用することは困難であったが、イオン液体中での陽極酸化では系全体がイオン性であり,陽極近傍にアニオン種が集中するためラジカルが再結合する前にバルク層に拡散できる可能性があるため,ラジカル付加系をモデル系として検討を行った。Kolbe ラジカル発生系の溶媒としてイオン液体(DEME BF4)を用い,カルボキシラートイオンの対カチオンとしてナトリウムイオン,トリブチルアンモニウムを採用した。1-ブトキシペルフルオロシクロペンテン(基質1)をラジカル補足剤として電解を実施した。イオン液体(DEME BF4)一酢酸混合溶媒系でフリーのカルボン酸が存在する条件下[カルボン酸:カルボキシラート=9:1(mol)]の場合に,メチルおよびF-プロピルラジカルが基質1に補足された生成物が主生成物として得られた。これらの結果は,イオン液体を媒体とすることにより、陽極近傍から一電子酸化-脱炭酸過程で生成したラジカルをバルク層に拡散させる効果が発現したものと理解できる。
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