研究概要 |
1.イオン液体塩の液液分配:一連の1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムイオン([RMelm]+)の塩について,イオン対および構成イオンのジクロロメタン/水間分配定数(K_D)を決定した。陽イオンのK_Dはアルキル鎖長とともに増大し,陰イオンの場合も[BF_4]-<[PF_6]-<[Pic]-<[NTf_2]-の順にモル体積が大きくなるにつれてK_Dが増大した。また,イオン対のK_Dについても,その陽イオン・陰イオン依存性はイオン自身のK_Dの序列と一致した。このようなK_Dのイオン種依存性は,正則溶液論を用いて定量的に説明された。また,サイズの近い[RMeIm]+とテトラアルキルアンモニウムイオン([R_4N]+)とを比較すると,これらのイオンのK_Dはほぼ等しいにもかかわらず,イオン対のK_Dは[RMeIm]+>[R_4N]+であった。これより,[R_4N]+に比べて[RMeIm]+のほうが,水中でのイオン対生成に伴うイオンの脱水和が大きいことが示された。 2.低極性溶媒中におけるイオン対の二量化:液液抽出法を用いて,低極性溶媒中における種々のイオン液体のイオン対二量化定数(K_<dim>)を求めた。ジクロロメタン中での[RMeIm][NTf_2]塩のK_<dim>値は,同じ溶媒中で電気伝導度法によって求められたイオン対生成定数(K_IP)に比べて4桁も小さいことが示され,イオン対-イオン対間の相互作用がイオン対を構成する陽イオン-陰イオン間の相互作用よりも著しく弱いことがわかった。また,クロロベンゼン中でサイズの近い8種類の陽イオンの[NTf_2]塩についてK_<dim>を求めた。その結果,陽イオン種によるK_<dim>の変化は,概ねK_IPの変化とは逆の傾向を示した。さらに,K_<dim>の序列はイオン液体自身の粘度の序列に一致することから,イオン対-イオン対間相互作用がイオン液体の粘性に深く関わっている可能性が示された。
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